「バイクはやめとけ」と言われた

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親に言われる。職場の先輩に言われる。たまに全然知らないおっさんにも言われる。
言い返せないのがつらいところで、こっちは「乗りたい」しか持ってないのに、向こうは「危ないから」という一見まともな理由を持ってる。感情 対 正論の構図に見えるので、大抵は黙って引き下がることになる。
ただ、この構図が実は逆だという話をしたい。
「バイクはやめとけ」を全国に広めた張本人が、とっくにそれをやめてる。
1982年に決議された「三ない運動」

日本には、高校生にバイクを与えないことを組織的にやっていた時期がある。
三ない運動というやつで、内容はこの三つだ。
- 免許を取らせない
- 買わせない
- 運転させない
これが1982年、全国高等学校PTA連合会の大会で決議されて、全国の高校へ広がった。避難訓練の「おさない・かけない・しゃべらない」みたいなノリで、標語として掲げられてた。
つまり今40代後半から上の世代は、学校で組織的に「バイクはやめとけ」と教わっている。個人の意見じゃなく、教育としてそう刷り込まれた世代がいる。
親に言われるのは、その人が意地悪だからじゃない。そう習ったからだ。
その運動、段階的に畳まれてる

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ここからが本題で、三ない運動はもう続いていない。
1997年に、位置づけが「特別決議」から「宣言」へ格下げされた。そして2012年の和歌山大会以降、全国高等学校PTA連合会としての活動はマナーアップ運動へ転換されて、全国組織としての三ない運動は終わってる。
止めを刺したのが埼玉県だ。埼玉は入学時に「高校生にバイクは不要」と書かれた紙を配っていたくらい、県単位で最も強力に三ない運動を推していた場所なんだけど、そこが2019年4月1日から新しい指導要項を施行して、三ない運動を正式に廃止した。
代わりに掲げられたのが「乗せて教える」という方針で、要するに真逆になった。
隠して遠ざけるより、乗せて安全教育をやったほうが結果的に安全だ、という判断に切り替わったということだ。
「やめとけ」は当時ですら間違いだったと言われてる

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三ない運動については、当時から批判があった。
免許を取らせないことにしたら、無免許で乗る高校生が出る。学校が指導できないので、誰も安全運転を教えない。結果として、隠れて乗る一番危ない状態の子どもが生まれる。
遠ざけることが安全に繋がらなかった、というのが見直しの理由になってる。
そこから40年経って、バイクの乗り方も車体も当時とはまるで違う。当時ですら妥当じゃなかった標語を、2026年に持ち出されてるというのが今の状況になる。
ただし、危ないのは本当

ここで「だから危なくない」と書いたら、俺も同じことをやることになる。
二輪車が危ないのは事実だ。2025年の統計で、交通事故死者のうち二輪車乗車中が占める割合は全国で18.7%になってる。保有台数から考えれば、明らかに高い。
ここは認めた上で、中身を見てほしい。
車両相互の事故で亡くなった二輪車乗車中の人のうち、右折対直進、つまりバイクが直進していて相手が右折してきた形が約3割を占めてる。出会い頭と合わせると、事故類型の上位はこの二つになる。
これ、何を意味してるかというと、死因の主流は「調子に乗って飛ばして自爆」じゃない。普通に直進してて、見落とされて刺されるが最大のパターンだということだ。
だから対策の方向が変わる

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「やめとけ」の裏にあるイメージは、たぶん暴走した若者が単独で事故る絵だと思う。実際の統計はそこじゃない。
見落とされて刺されるのが主流なら、やることは「飛ばさない」より前に、
- 交差点で右折待ちの車と目が合っているか確認する
- 対向車の陰から出る瞬間に速度を落とす
- 昼でもライトが目立つ位置にいる
- 車の死角に長く居座らない
こっちになる。要は、自分が見えているかどうかを疑うのが一番効く。
これは乗らなければゼロにできるリスクだけど、乗ったうえで下げられるリスクでもある。三ない運動をやめた側が出した結論と同じで、遠ざけるより教えたほうが安全だという話に戻ってくる。
心配で言ってるのは分かってる

一応書いておくと、親が「やめとけ」と言うのは、子どもに死んでほしくないからだ。ここを取り違えて喧嘩しても何も進まない。
だから使うべきなのは「うるさい」じゃなく、上の材料のほうになる。
その標語はもう本家が畳んでること。今は「乗せて教える」に変わってること。事故の主因は暴走じゃなく見落としで、そこには具体的な対策があること。心配の中身に、具体で答える形になる。
それでも反対されることはある。そのときは、少なくとも「なんとなく危なそう」で人生の選択肢を削られる状態からは抜けてる。あとは自分で決める話だ。
免許を取るところまで進んだら、教習所で詰まったときの話はこっちに書いてある。
装備で削れるリスクの話はヘルメットの記事が近い。
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