バイクの姿勢制御
バイクの姿勢制御と聞いて真っ先に思い浮かぶのはバンクだと思うんだけど、実はその他にも二つある。他の二つはヨ―イングとピッチングになるんだけど、バンク(ロール)よりも難しい上に目に見えづらいから、おざなりにしている人も多々見受けられる。
ヨ―、ロール、ピッチ
ヨ―とロールとピッチはすべて回転方向についての言葉。
簡単に説明するとロールはいわゆるバンクで、バイク乗りならコーナーで自然につけている回転になる。次にピッチはウィリーを想像してもらうとわかりやすいんだけど、車体の縦方向の回転のことを指す。そしてヨーは車体の左右方向への回転で、車体自体の向きを曲げるのがヨーイングになる。
法定速度でもトレーニングしたい
バイクを本当に上手くコントロールできている人はこの三つを意識して走っているんだけど、このうちロールに関しては法定速度内で練習しにくいものなんだ。
出来れば普段何気なく乗っているときから上手く乗れるように練習できるのがベストだから、今回は法定速度内でできるバイクの姿勢制御のトレーニングについて解説していく。
ロールは三回転の中でも最も簡単
まず知っておいてほしいのがバンクをするために角度をつけるローリングは三つの中で最も簡単な回転だということ。
その理由としては
- 目に見えやすい
- 横から力を加えるだけでできる
- 大雑把な動作でも問題ない
三つの回転で「はいやってみて」と言われてすぐにできるのは間違いなくローリングになるだろう。ピッチングに関しては細かいコントロールが難しいし、ヨーイングで積極的に車体の向きを変えるとなると非常に高度な技術を必要とされる。
バンクさせようとすると法定速度を超える
もう一つ問題なのが、バイクで「楽しい」と感じるレベルでバンク角をつけようとすると簡単に法定速度を超えてしまうということ。
ローリングはもちろんバイクを曲げる上で大事ではあるんだけど、ローリングの練習は法定速度を超えずにバンクできるコーナーのために取っておいて、それまでは他の練習に励む方がオススメ。
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簡単だけど危ない
もう一つ、ローリングの練習は中高速コーナーでやると速度が乗りすぎる上に不安定になって危険が伴うということ。もちろんすぐにコケるほど危険じゃないんだけど、他の二つが疎かな状態で曲げようとするとよく曲がったりあまり曲がらなかったりで安定しないコーナリングになって、ふとした時に道からオーバーしてしまうこともある。
ローリングは簡単にできるし見栄えもいいんだけど、危険な上にコーナリングが上手くならないという技術の向上を狙う人からすると微妙な練習になってしまうから注意が必要なんだ。
積極的なヨーイングは最初は難しすぎる
バイクのレースをよく見る人であれば、プロの人が操るバイクがコーナーでリアタイヤを滑らせながら曲がっているところを見たことがあると思う。詰まる所ヨーイングを極めた先にあるのがこれになるんだけど、リアタイヤを適切な量流して曲がるとなるとアマチュアレーサーでもできないほど難しすぎる。
ヨーイングの変化を感じてみよう
一番安全でわかりやすいのが、斜度のきつめな上り坂でリアタイヤに体重をかける感じで少しシートの後ろ側に座って曲がってみてから、下り坂で若干シートの前よりに座って曲がってみるとヨーのつき方に変化を感じられるはずだ。
これをすると上り坂の時はフロントタイヤの接地感が薄い感覚とバイクがリアタイヤを軸にして曲がろうとする感じがつかめると思う。対して下り坂だとバイクがフロントから積極的に切れ込んで、普段よりクイックに曲がる感じがわかると思う。
ピッチングの感覚を掴んだらヨーイングも意識
次の項でピッチングについて詳しく解説していく。ヨーイングは、ピッチングとローリングが上手くなって初めて上手なつけ方がわかるようになってくるから先にピッチングの練習をしよう。
ローリングに関してはフォームだけしっかりできていれば上達にも時間はかからないから、こっちの記事を参照してみてほしい。
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ピッチングをしてみよう
で、法定速度内でも問題なく遊べるのがこのピッチングになる。ピッチングはマシンが減速したり加速したり、上り坂になったり下り坂になったりすると起こる回転だ。
上のヨーイングの変化の話で、リアタイヤに体重を乗せてみるとか書いたのはピッチングの動作になって、ピッチングが上手くできているとコーナーでも自分の狙ったラインを走りやすくなるという効果が出てくる。
ピッチングを感じてみる
ピッチングはブレーキを強めにかけてみるとすぐに感じることができる。ブレーキをかけると体が慣性で前側に引っ張られるのと同時に、フロントフォークが縮んで、代わりにリアサスペンションが伸びるような感覚になると思う。
これこそがピッチングで、この動作を上手く使うとコーナーで安定しながらも早めに車体の向きを変えて曲がっていけるようになる。信号待ちだけでピッチングを感じるのはかなりもったいなくて、バイクを上手く乗る上で非常に大事になってくるから、ぜひともマスターしていきたいところ。
コーナー手前で減速
さて、早速ピッチングを感じながらコーナーを曲がって遊んでいく。みんなコーナーの手前ではエンジンブレーキだけで減速すると思うんだけど、ピッチングをより上手くできるようにするにはフロントブレーキをかけていく必要がある。
フロントブレーキをかけると効果的にフロントに荷重をかけることができるから、コーナリングもスムーズかつクイックなものにすることができる。
ブレーキのリリースはゆっくりと
最も大事なのがコーナー手前にてフロントブレーキで減速した後、急にフロントブレーキを離さないこと。急に離してしまうと折角そこまでフロントフォークを縮めてかけていた荷重が、フロントフォークが伸びることでなくなってしまうんだ。こうなると、バンクにスムーズに移れなくなってしまって不安定なコーナリングになってしまう。
これを回避するにはフロントブレーキをゆっくりとリリースすることが非常に大事になってくる。サーキットではバイクが傾き始めてからもフロントブレーキを若干かけているとか聞いたことがあると思うんだけど、それもこれが理由。
「フロントブレーキはガツンとかけてじわっと離す」これを意識してコーナー手前の減速をしてみよう。
コーナリング中はアクセルは一定
ある程度バイクの向きが変わって回転が定常円になったら、アクセルは極力一定にしてフロントとリアにかかる荷重を均一にしていこう。
ここで、若干上り坂だったり下り坂だったりする場合は自分の座っている位置を調節することで適度な荷重をかけやすくなる。
コーナー出口に向かってアクセルオン
最後にコーナーの出口が見えて、定常円で曲がる必要がなくなったら徐々に荷重をリアよりにしてアクセルを開けていこう。
アクセルを開けるとバイクはリア側に荷重がかかるから膨らみ気味なラインを通ることになる。公道で練習する場合は中央線を越えない辺りを狙ってアクセルオンをしていくと最高に気持ちいい。
この時に注意すべき点は、アクセルを開けすぎてリアが滑ることと対向車の存在。リアが滑るような場合は大抵ライン取りが悪くて無理に曲げようとしてしまっているときだから、余裕を持ったラインできれいに曲がっていこう。対向車がいるときはラインを中央線付近から自分の走っている車線の中央付近に変えて狙っていくと〇。
後ろに車、バイクがいるときは控えめに
ピッチングを感じながら乗るのはマジで楽しいからいっぱいやりたくなっちゃうんだけど、ブレーキをかけると後ろの車両に迷惑がかかるから誰かいるときは控えめにしよう。
特に、ピッチングに慣れてきて積極的に荷重移動させられるようになってくるとブレーキを強くかけられるようになってくるから、他の車両との速度の差には注意して運転したいところ。
斜度の高い道路でのピッチング
上では加減速で起こるピッチングを上手く活用する方法を書いたんだけど、今度は地形で勝手に荷重が変わってしまう時の対処法になる。
直線で前後の荷重配分を確認
コーナーに入る前に坂の直線で前後どちらにどの程度の荷重がよっているのかを確認しておこう。
基本的には上りはシートの前側気味に、下りはシートの後ろ側気味に座ることで荷重配分を5:5に近づけることができるから、平坦な道と同様なピッチを意識して自分の着座位置を変えていこう。
上りコーナー
安全を見るかピッチングを楽しむかで少し乗り方が変わってしまう。
安全を重視する場合は上りコーナーは減速してからアクセルを追加していく感じでコーナーを曲がるんだけど、これだと荷重がリアによりすぎて大回りでだらけたコーナリングになってしまう。
テキパキとしたコーナリングをするには、結構ツッコミ気味で入ってコーナーではアクセルは最高でもパーシャルにした方がきれいに曲がることができる。
ただ、比較的安全な上りであっても最初からツッコミ気味でコーナーに入るのは危険だから、ある程度慣れた場所で自信がある場合のみにとどめておこう。
下りコーナー
下りコーナーは基本的にはしっかり減速してからアクセルは一定か若干エンブレ掛け気味を意識して曲がっていく。
コーナリング中にフロントブレーキをかけると、下りで荷重がフロントによっているせいで非常にフロントに負荷をかける走りになって不安定になりがちだから、下りのコーナーは手前の直線でしっかりと減速してコーナリング中はフロントブレーキはあまり触らないのがオススメだ。
とはいえ、下りも急にフロントブレーキを離してしまうと安定感が失われてしまうから、ブレーキはガツンと握ってじんわり離すの意識は持っておきたい。
ヨーイング、ピッチングは超おもろい
バイクはバンクさせるのも楽しいんだけど、俺はその楽しさは全体の2割か3割くらいだと思ってる。
コーナー前の減速からピッチングを意識してフロントフォークを縮めてバンクにスムーズに繋げて…と色々考えた末に、ヨーの変化をコントロールできた時の楽しさは正に別格。
バイクに乗らされているというのはよく言う表現なんだけど、バイクに乗るか乗らされるかの境目は上手くヨーイングをコントロールできるかどうかにあると思う。
確かにバイクのヨ―を制御するのは難しいし、上手く思い描いた走行ラインに乗せられてキマる時もあればキマらないときもある。でも、そんな難しいヨーイングを制した時にはただがむしゃらにバイクを傾けているのとは別次元の「おもしろさ」があるんだ。
そのために普段から何気ないコーナーでもピッチングを意識して、サスペンションの伸び縮みを肌で感じてバイクに乗るっていう試行錯誤の期間が必要になっていく。ただ、これもこれでマジで楽しい。
慣れてきたらカスタムもしてみよう
慣れてきて前後のサスペンションの動きが感じにくいようであれば油面を下げてみたりバネを変えてみたりと、マシン側からの反応をよくするためのカスタムもしてみたくなるのも必然。
そうなれば、今とは違ったカスタム観をもってバイクを弄ることができるようになると思う。
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