数万円で「別のバイクになる」と言われるパーツ

アクスルシャフトは、ホイールの中心を貫いて車体に留めてる棒だ。地味も地味で、普段は見えない。
これをクロモリ製に替えると、ハンドリングが変わると言われてる。値段は数万円。
で、こういうのは眉に唾を付けて聞くことにしてる。「変わった」と言う人が金を払った人しかいない類のパーツだからだ。
ということで、何が起きてるはずなのかを構造から見ていく。
クロモリは「軽い金属」じゃない

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まず誤解を潰しておく。
クロモリはクロムモリブデン鋼で、鉄の合金になる。アルミやチタンみたいに、密度そのものが軽い素材じゃない。
比重は普通の鋼とほぼ同じ。つまり同じ形で作れば重さもほぼ同じになる。
じゃあ何が違うかというと、強度が高い。同じ強度を確保するのに、より細く、より薄くできる。だから設計を変えれば軽くできるのであって、素材を替えただけでは軽くならない。
自転車のフレームでクロモリが好まれるのも同じ理屈だ。
純正が何でできてるかで話が変わる

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ここが一番大事なところになる。
純正のアクスルシャフトは、中空のスチールであることが多い。中が空洞になってて、軽さと剛性を両立させてある。
そこにクロモリの中実(中身が詰まった)シャフトを入れると、剛性は上がるが重くなることがある。逆に、純正が中実スチールで、社外がクロモリの中空なら軽くなる。
つまり「クロモリだから良い」じゃなく、純正が何で、社外が何なのかを比べないと意味がない。製品ページに重量が書いてあるなら、まずそこを見る。
変わるとしたら剛性

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体感の話が出るとすれば、たぶんこっちになる。
アクスルシャフトは、ブレーキング時にフロントフォークの左右を繋いで支えてる部品でもある。ここがしなると、左右のフォークがバラバラに動く。
剛性が上がると、フォークの動きが揃う。強くブレーキを掛けたときの安定感や、倒し込んだときの正確さとして出る、という理屈になる。
ただしここには裏がある。剛性は高ければ高いほど良いわけじゃない。
車体はある程度しなることで、路面からの入力を逃がしてる。全部を硬めると、逃げ場がなくなって挙動が唐突になることがある。レース車両でわざとしなりを残すのはこのためだ。
で、効くのか

正直に書くと、大半のライダーには分からない。
理由は単純で、アクスルシャフトの剛性が問題になるのは、フォークがしなるほど強くブレーキを掛けたときになる。街乗りとツーリングの範囲だと、そこまで入力が入らない。
先に効く場所が他にいくらでもある。
- タイヤの銘柄と空気圧
- フォークオイルの番手と油面
- サスペンションのプリロードと減衰
- そもそもタイヤが温まってるか
同じ数万円なら、タイヤを一本良いものにしたほうが体感は確実に大きい。
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全否定はしない。理由がある人はいる。
サーキットで詰めてる人。上に書いた「フォークがしなるほどの入力」が実際に入る。そして他の項目を既に詰め終わってる段階なら、次に触る場所として順番が来る。
純正が錆びてる、傷んでる人。交換が必要なら、そのタイミングで素材を選ぶのは合理的だ。
車体を作り込むのが楽しい人。これが一番正直な理由だと思う。効果の大小と、いじる楽しさは別の話になる。俺はこれを否定する気は全くない。
判断の順番

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まとめると、こうなる。
1. 純正と社外の重量と中空/中実を比べる。ここが書いてない製品は保留していい
2. タイヤとサスを先に触ったか確認する。効きの順番はほぼ確実にそっちが上
3. サーキットで詰めてるかどうか。街乗りメインなら、体感を期待して買うのはおすすめしない
そのうえで買うなら、効果で買うんじゃなく、その部品が欲しいから買うと割り切ったほうがいい。そう思って買った人は満足してるし、効果を期待して買った人は「よく分からん」で終わってる印象がある。
カスタムの向き合い方としては、そっちのほうが健全だと思う。
